エレクトーンコンクールで入賞する子には、どのような特徴があるのでしょうか。
「難しい曲を弾ける子?」
「ミスが少ない子?」
「テクニックが高い子?」
もちろん、どれも大切です。
しかし、長年エレクトーンを指導し、全国大会レベルまで進んだ生徒を輩出し、さらにコンクールの審査にも携わってきた経験から言うと、上位に入る子には、技術だけでは説明できない共通点があります。
それは、
心・技・体が伴っていること。
そして何より、
「その子の音楽が、指先から伝わってくること」
です。
エレクトーンコンクールは「上手に弾けば勝てる」わけではない
コンクールに出場する子は、当然ながら一生懸命練習しています。
音を間違えない。
リズムを正確にする。
難しいフレーズを弾けるようにする。
足鍵盤を安定させる。
レジストレーションを完成させる。
こうした技術的な練習は欠かせません。
しかし、ある程度以上のレベルになると、出場者の多くが一定の技術を持っています。
そこで差がついてくるのが、
「その技術を使って、何を表現しているのか」
という部分です。
同じ曲を弾いていても、
「音符を正確に並べている演奏」
と、
「音楽を語っている演奏」
では、聴いている側が受ける印象がまったく違います。
丁寧な演奏なのに、なぜか心に残らない?
コンクールでよくあるのが、
「とても丁寧に弾いているのに、なぜか心に残らない」
という演奏です。
音はきれい。
リズムも安定している。
大きなミスもない。
強弱もついている。
一見すると、とても完成度の高い演奏です。
それでも、審査員として聴いていると、
「何かが足りない」
と感じることがあります。
その「何か」の一つが、
演奏者の気持ちです。
指先に気持ちが乗っているか
私は、演奏を聴くときに、
「この子は、どんな気持ちでこの音を弾いているのだろう?」
と感じることがあります。
指は正しい鍵盤を押している。
音も間違っていない。
でも、ただ音が出ているだけに聴こえる。
反対に、
ほんの小さなミスがあったとしても、
「この子は今、この音楽を伝えようとしている」
と感じる演奏があります。
この差は非常に大きいです。
それは単純に「感情を込めて大きく弾く」という話ではありません。
音を出す瞬間。
鍵盤から指を離す瞬間。
次の音へ向かう瞬間。
フレーズの頂点。
音楽が静かになる場所。
最後の音。
一つ一つに、その子自身の意思があるかどうかです。
審査員は、その子が「どう歌っているか」を聴いている
ここでいう「歌う」というのは、声に出して歌うことではありません。
メロディーをどこへ向かわせるのか。
どこで息をするのか。
どこで盛り上がるのか。
どこで力を抜くのか。
どの音を大切にするのか。
フレーズの最後をどう終えるのか。
そうした音楽の呼吸が、演奏から感じられるかどうかです。
同じ楽譜でも、演奏者によってまったく違う音楽になります。
なぜなら、音符を「弾いている」のか、音楽を「歌っている」のかで違いが出るからです。
上位に入る子の演奏には、音楽の流れがあります。
一音一音がバラバラではありません。
前の音から次の音へ。
一つのフレーズから次のフレーズへ。
そして曲の始まりからクライマックス、最後の音まで。
すべてがつながっています。
心・技・体がそろった演奏とは?
私がコンクールで上位に入る演奏を聴いていて感じるのが、
心技体がそろっている
ということです。
心=何を伝えたいのか
まず「心」。
この曲で何を表現したいのか。
どんな景色を見せたいのか。
どんな感情を届けたいのか。
本人の中に、音楽に対する思いがあるかどうかです。
先生から言われた通りに弾くことも大切です。
しかし、最終的には、
「私はこう弾きたい」
という本人の意思が必要になります。
技=それを音にできる力
次に「技」。
どれだけ素晴らしい音楽を頭の中でイメージしていても、それを音にできなければ伝わりません。
指。
足。
リズム。
音色。
レジストレーション。
ペダル。
強弱。
フレーズ。
こうした技術があって初めて、自分の中にある音楽を外へ出すことができます。
体=音楽を支える身体
そして「体」。
身体が固まっていると、指だけで一生懸命弾く演奏になりやすくなります。
一方で、身体全体が音楽の流れに乗っている子は、自然にフレーズが生まれ、リズムも生きてきます。
エレクトーンは手だけで演奏する楽器ではありません。
両手、両足、身体全体を使って音楽を作ります。
だからこそ、
身体の使い方も、そのまま音楽表現につながります。
「丁寧に弾く」と「伝わる演奏」は違う
コンクールを目指す子ほど、
「丁寧に弾きましょう」
と言われることが多いと思います。
もちろん、丁寧さは大切です。
しかし、
丁寧に弾くことが目的になってはいけません。
「間違えないように」
「きれいに」
「慎重に」
という気持ちが強くなりすぎると、演奏そのものが小さくなってしまうことがあります。
本当に大切なのは、
丁寧に弾いたうえで、何を伝えるのか。
ということです。
音楽は、きれいに整えるだけではありません。
ときには大胆に。
ときには繊細に。
ときには思い切って。
その曲に必要な表現を選ぶことが大切です。
上位に入る子は「メロディーが歌っている」
上位に入る演奏を聴いていると、メロディーが自然に歌っています。
「ここがメロディーです」
と主張しているのではありません。
音楽の流れの中で、自然にメロディーが浮かび上がってきます。
フレーズの始まり。
フレーズの頂点。
フレーズの終わり。
その一つ一つがつながっています。
だから、聴いている側は、
「この子は、このメロディーを歌っている」
と感じるのです。
上手なのに、なぜか上位に届かない演奏とは?
ここは、コンクールを目指すうえで非常に重要です。
技術的にはとても高い。
難しい曲も弾ける。
ミスも少ない。
それでも上位に届かないことがあります。
その理由は一つではありませんが、
「技術が表現につながっていない」
ということがあります。
例えば、
① すべての音を同じように大切にしている
全部を一生懸命弾いてしまうと、音楽の中で本当に聴かせたい場所が分からなくなります。
② 強く弾くことが「表現」になっている
盛り上げたいから、とにかく大きくする。
しかし、本当の表現は音量だけではありません。
③ ミスを恐れすぎている
間違えないことに集中しすぎると、音楽を届けるエネルギーが弱くなることがあります。
④ 先生の表現をそのまま再現している
先生の演奏を真似ることは勉強になります。
しかし、最終的には本人の音楽になっている必要があります。
⑤ 曲を「最後まで弾くこと」が目的になっている
一曲を最後まで弾けるようになったことと、一曲を音楽として完成させることは別です。
全国大会レベルまで進む子に感じる共通点
全国大会レベルまで進む生徒を指導してきた経験から感じるのは、技術だけではありません。
もちろん、技術的な基礎は非常に高いです。
しかし、それ以上に、
「音楽に対する反応が速い」
と感じることがあります。
「ここはもっとこうしたい」
「この音は違う気がする」
「ここはもっと歌いたい」
「この音色のほうがイメージに近い」
というように、自分の耳で音楽を判断する力があります。
言われたことをできるだけではなく、
自分で音楽を考えられる。
これは大きな違いです。
そして、自分で考えたことを、技術を使って音にできる。
だから演奏に個性が生まれます。
「この子は強い」と感じる演奏
審査をしていると、
「この子は強いな」
と感じる演奏があります。
それは、必ずしも一番難しい曲を弾いている子ではありません。
音楽の最初から、
「私はこの曲をこう表現します」
という意思が感じられる子です。
音が出た瞬間から、演奏者の世界に引き込まれる。
そして、曲が進むにつれて、その世界がどんどん広がっていく。
最後の音まで気持ちが切れない。
そういう演奏は、非常に印象に残ります。
本番では「ミスをしない」以上に大切なことがある
もちろん、本番でミスをしないことは大切です。
しかし、
ミスをしないことだけを目標にすると、演奏が守りに入ることがあります。
コンクールのステージでは、
「間違えないように弾こう」
だけではなく、
「この音楽を聴いている人に届けよう」
という気持ちを持ってほしいと思います。
一音間違えたからといって、すべてが終わるわけではありません。
そこで止まらず、次の音楽へ進む。
むしろ、その後の音楽をどう続けるかのほうが大切なこともあります。
コンクールで上位を目指すなら「自分の耳」を育てる
上位を目指す子には、ぜひ、
自分の演奏を自分で聴く習慣
をつけてほしいと思います。
録音して聴いてみる。
そして、
「今のメロディーは歌っていた?」
「どこが一番聴かせたい場所だった?」
「強弱は本当に伝わった?」
「音色の変化には意味があった?」
「最後まで気持ちが続いていた?」
と考えてみる。
先生に「ここを直して」と言われるだけではなく、
自分で自分の演奏を評価する耳
を育てることです。
この力がついてくると、演奏の伸び方が変わってきます。
最終的に差がつくのは「その子にしかない音楽」
コンクールでは、同じようなレベルの子がたくさん出場します。
その中で、
「この子の演奏、なんだか心に残るな」
と思わせるものがあります。
それが、その子自身の音楽です。
技術だけではありません。
音色だけでもありません。
派手なパフォーマンスでもありません。
その子が、
何を感じて、何を考えて、どう音にしているのか。
それが演奏に表れているのです。
だからこそ、
「上手に弾く」から「自分の音楽を奏でる」へ。
ここが大きなステップになります。
まとめ|入賞する子は「心技体」が音になっている
エレクトーンコンクールで上位に入る子には、
● 技術が安定している
● 曲を深く理解している
● メロディーが歌っている
● フレーズに方向性がある
● リズムが生きている
● エレクトーンの機能を音楽的に使える
● 身体全体で音楽を表現できる
● 本番でも自分の音楽を出せる
● 自分の耳で演奏を判断できる
● そして何より、指先に気持ちが乗っている
という共通点があります。
もちろん、コンクールですから結果は大切です。
金賞、銀賞、入賞、全国大会への進出。
目標を持って努力することは、子どもにとって大きな経験になります。
でも、その先にある本当の目標は、
「上手に弾くこと」ではなく、「自分の音楽を人に届けられるようになること」
なのではないでしょうか。
審査員として演奏を聴いていると、その子がどのように歌い、どのように音を奏でているのかは、演奏から伝わってきます。
そして、
心で感じたことを、技術で支え、身体を通して、指先から音楽として届ける。
その「心技体」がそろったとき、演奏には大きな説得力が生まれます。
丁寧に弾く。
正確に弾く。
難しい曲を弾く。
そこからもう一歩先へ。
「この子にしか出せない音」を目指してほしい。
それが、コンクールで上位を目指す子どもたちに伝えたい、一番大切なことです。



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